腸重積
腸重積とは、腸管の一部が連続する肛門側の腸管に嵌入する(腸が腸に入り込む)病気です。
放置すると腸閉塞を起こし、さらに時間がたつと血行障害により腸管の壊死を起こすため、手術が必要になることがあります。
したがって緊急性のある疾患であり、診断がつき次第すぐ処置する必要があります。
本症のほとんどは原因不明ですが、約半数に感冒や嘔吐下痢などの先行感染症状を認めます。
約5%に原因となる器質的疾患(消化管の奇形、腹腔内腫瘍など)を認めます。
好発年齢
4ヶ月~1歳半に多く、80~90%が2歳以下です。
2歳以上での発症は器質的疾患の可能性が高くなります。
症状
腹痛、嘔吐、血便です。腹痛と嘔吐は腸閉塞の症状です。
初期の腹痛は間歇的です。
乳幼児では突然火がついたように激しく泣きだし、数分するとおさまりますが10~30分の間隔で同様の症状を繰り返します(間欠的啼泣)。
その後、しばらくして血便が出るとより疑わしくなります。
血便は血行障害からの症状で、症状が進むとイチゴゼリー状の便になります。
腸閉塞が進行すると、痛みが持続性となり、ぐったりして、おなかが張り、嘔吐も緑色(胆汁性嘔吐)となります。
以上のような症状があれば夜間でも小児科を受診しましょう。
急性腸炎と症状が紛らわしく、また急性腸炎に続発することもありますので注意が必要です。
診断と治療
血便は有力な診断根拠となるため、疑わしい場合は浣腸にて血便の有無を確認します。
重積した腸管を腹部腫瘤として触れることもあります。
腹部エコーでターゲットサイン(重積した腸管が弓矢の的のように写る)を認めれば診断はほぼ確実です。
確定診断にはレントゲン透視下で肛門から空気を注入し、注腸造影を行います。
腸重積を診断したら、そのまま重積部を空気圧で押し戻して整復します(高圧浣腸)。
高圧浣腸で整復できない場合や、発症から時間がたっている場合(36~48時間以上)は開腹手術を行うことがあります。
整復終了後24時間は再重積することが多いので、一泊入院し経過観察を行うのが原則です。
予後
再発が約5%に認められますが、予後は一般に良好です。
再発を繰り返したり、好発年齢よりも年長児で発症した場合、腸管自体に異常がある可能性があり(憩室、ポリープなど)精査が必要になります。
周期性嘔吐症
“自家中毒”、“アセトン血性嘔吐症”とも言われます。
2~9歳の小児にケトン血症を伴った反復性嘔吐発作を起こす症候群です。
発作の間欠期には何の異常も見られません。
単一の疾患ではなく、代謝疾患(ケトン血性低血糖など)、内分泌疾患(周期性ACTH・ADH分泌過剰症)、自律神経障害などを含めた症候群としてこの病名を用いることもあります。
心理的、身体的ストレスが発作の誘因となり、感冒や感染性胃腸炎に続発することも多い疾患です。
治療には制吐剤の坐薬を使用し、あめや氷砂糖をなめさせます。
1時間ほどしてイオン飲料などを少量飲ませて、嘔吐しなければ少しずつ飲む量を増やします。
症状が強いときは輸液が必要です。
重症化しやすい子は早めの輸液が良いでしょう。
年齢が大きくなると発作を起こしにくくなります。
予防には規則正しい食事が必要です。
疲れたときに夕食を食べずに寝てはいけません。
食欲が無いときは、あめや甘い飲み物で低血糖を防ぎましょう。
ケトン体とは
ケトン体は脂肪の燃えかすです。
小児は肝臓や筋肉にグリコーゲンの蓄えが少ないため、飢餓のときすぐに体脂肪を燃焼させケトン体をつくってしまいます。
嘔吐下痢のとき、ケトン体は衰弱や脱水の指標となります。
尿の検査でケトン体(アセトン体)が出ていれば、ケトン血症を起こしています。
ケトン体は頭痛、腹痛、嘔吐の原因にもなり、ますます食事が取れなくなってしまいます。
ケトン血症が強いときは、早めの輸液が必要です。